スーツをきれいに保つといえば、クーリングですが、一般的なクリーニングは生地を傷める可能性が大いにありますので、その頻度とクオリティに注意する必要があります!
クリーニングにも種類がある
クリーニングには、ドライクリーニングとウェットクリーニングがあります。
あまり詳しくない方で、「クリーニング」と聞いて思い浮かべるのは、ほぼ100%ドライクリーニングです。
では、ドライクリーニングとウェットクリーニングでは何が違うのでしょうか。
化学のお時間です。笑 高校化学程度の知識で解説をします。興味のない方は読み飛ばしてください。
ドライクリーニングでは、有機溶剤を用いて洗浄を行います。つまり、水は使わないわけです。
水は電気陰性度の高い酸素分子を含んでおります。電気陰性度とは、電子を引き付ける強さの度合いを表す指標です。これにより、水分子では、水素の持つ電子が酸素に引き付けられ、電気的な偏りがうまれます。この電気的な偏りを極性と呼びます。極性を持つ分子は極性をもつ溶媒に溶けやすく、極性をもたない無極性分子は無極性の溶媒に溶けやすくなります。
ここで、代表的な無極性の物質が高分子の有機化合物である油脂です。油脂は無極性の部分がその分子の大半を占めるため、全体としては無極性としてふるまいます。
したがって、油分を含むもの(皮脂汚れや化粧品など)の汚れを落とす場合は、有機溶媒で洗浄することが効果的なわけです。
つまり、皮脂などの油汚れ→ドライクリーニング、通常の洗濯→ウェットクリーリングとなるわけです。
ドライクリーニングでは通常の汚れは落ちないため、クリーニングに出しても汚れが落ちずに蓄積し続けるということがあります。そこでスーツを丸洗いする必要が出てくるわけです。
そう簡単には洗えないのがスーツ
これだけ見ると、じゃあ家で洗えば良くねえか?と思いがちですが、スーツはTシャツなどの通常の洋服と違い、右の画像にあるような芯地が多く使われております。
毛芯というは、馬毛を用いたもので、襟の立体感やスーツ前面の構築的なシルエットを演出するために使われる素材です。
毛芯は比較的高価なスーツに使われる傾向にあり、比較的安価なスーツでは、接着芯が使われております。接着芯とは、簡単に言えば接着剤のようなものでくっつけたものです。
ひと昔前ですと、接着芯に対してはあまり良くない印象を持つ方が多かったのが事実ですが、近年はかなり改良され非常に優れた接着芯も使われております。
そうは言っても、水に濡れたり、長年使っていると接着している部分がはがれ、ラペル部分にボツボツが出ることがあります。
このように、スーツはいくつものパーツを組み合わせて作っているため、水洗いすると縮んでしまい、そのシルエットが大きく損なわれます。
そのため、ウェットクリーニングでは、場合によっては一度ばらしてアイロンをきちっとかけて組み立てなおすということが必要となってまいります。
このような工程が必要なことから、ウェットクリーニングの際は、クリーニング前に細かく採寸を行い、料金の見積もりを出し、クリーニング後も最初の採寸結果と比較しながら元通りに戻すという作業を行います。
その分料金も高額になり、どれだけ安くても5000円程度、平均的には7000円~10000円程度となります。本当に手の込んだ仕事をするクリーニングの場合では10万円近くすることもあります。
スーツの元値に見合うのか問題
多くの方にとって、クリーニングにそれだけの金額をかけるのは割に合わないでしょう。
私も普段使いしないようなスーツを除いて、ウェットクリーニングに出すというのは数年に1回程度しかありません。
ウェットクリーニングに出すべきスーツというのは、最低でも10万円を超えてくるような総毛芯のスーツになってくるでしょうか。
結局どうすればいいの?
そこでおすすめなのが、浴室干しです。
お風呂上りの蒸気がこもった状態のお風呂で一晩ほど干しておいてみてください。
これだけでも繊維の隙間に入り込んだ汚れやにおいは取れます。
要はスチームアイロンと同じ効果が得られます。
以前こちらのブログで紹介したブラッシングと浴室で干すというだけでもスーツはびっくりするほど長持ちします。
ただし、お風呂で干した後には1日から2日ほど陰干しすることを忘れないようにお願いいたします。
また、今回ご紹介した方法はいずれも馴染みのテイラー直伝の方法ですが、実践される場合はあくまでもご自身の責任の範囲内でお願いいたします。
良いビジネスマンのスーツは、ただただ高価なスーツというわけではなく、お手入れの行き届いた清潔感のあるスーツです。
これまでは、ご自身のために身にまとっていた服だったかと思いますが、社会人としての一歩を踏み出した皆様には、ぜひともご自身の周りの方々が良い気持ちになるような服装を心がけていただければと思います。そのために、正しいお手入れの方法を一緒に学んでいきましょう!
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